2022年10月23日 御本宮大祭 宮司講話

2022年10月23日 御本宮大祭 宮司講話

大神様が命ずる自然との共生
愛し、調和し、害さない

『十五条の御神訓』には自然という言葉が四回出てきます。本山博神学によれば、自然には精神が宿っています。単なる物質ではありません。石ころにも精神が宿っています。『御神訓』によれば、私たち人間にとって自然とは愛すべきものであり、ともに調和すべきものであり、害してはならないものです。そのために必要なことは、自然と共生するための心と知識です。

 自然と共生する心をつくるためには、そうしようと自分で思うことが始まりですが、それだけでは足りません。大切なことは実際に自然に触れることです。そして、その自然に宿る精神を感じることです。井の頭の神社の隣にある井の頭公園のような場所で自然に触れる、自分で花を育ててそれを愛でる、海や山に出かけて文字通りの大自然に触れる、様々な自然への触れ方があります。
 自然に触れるときに、自然と共生するための瞑想をしてください。自然と共生するための瞑想には、『十五条の御神訓』に基づいた三つの側面があります。一つ目は、自然を愛する瞑想です。まず、目の前の自然、自分の周りの自然を愛そうと思ってください。はじめは心のなかで言葉を使って「愛そう」と思います。次に、心の内を無言にして、言葉を使わずに自然を愛そうという意思を持続させます。そのときに大事なことは心だけでなく、その愛を身体でも感じることです。
 それが十分にできるようになったら、二つ目の、自然と調和する瞑想をします。まず、目の前の自然、自分の周りの自然と調和しようと思ってください。はじめは心のなかで言葉を使って「調和しよう」と思います。次に、心の内を無言にして、言葉を使わずに自然と調和しようという意思を持続させます。そのときに大事なことは心だけでなく、その調和を身体でも感じることです。
 それが十分にできるようになったら、三つ目の、自然の痛みを感じる瞑想をします。まず、目の前の自然、自分の周りの自然が人間の都合によって傷つけられている場合には、傷つけられている自然の痛みを感じようとしてください。はじめは心のなかで言葉を使って「自然の痛みを感じよう」と思います。次に、心の内を無言にして、言葉を使わずに自然の痛みを感じようという意思を持続させます。そのときに大事なことは心だけでなく、その痛みを身体でも感じることです。
 以上の瞑想では実感を大切にしてください。実感を大切にするとは、頭が先行しないということです。頭デッカチにならないということです。心が本当にそのように感じ、身体が本当にそのように感じるまで、時間をかけて待つのです。それは身体性が重要だということでもあります。自然とはまず身体で感じるものだからです。それでこそ、自然に宿る精神を本当に感じることができます。そうは言っても、現代人は観念が先行しているので、心で感じ、身体で感じるという順番でこの瞑想は組み立てられています。しかし、身体の方で先に感じたのであれば、それはそれでいいのです。

 実感を大切にすることの重要性は、何度言っても言い足りないくらいです。宗教は観念化すると簡単にイデオロギー化し、原理主義となり、テロリズムになってしまいます。しかし、それは宗教に限りません。真理、正義、自由、平和等といった崇高なものほど、観念化しイデオロギー化し、原理主義、テロリズムになりやすいのです。皆さんはエコ・テロリズムという言葉を知っているでしょうか。自然、地球が観念化するとエコロジーもテロ化します。これは昔からありますが、最近ではゴッホの名画にスープをぶちまけたグループがニュースになりました。彼らは名画よりも地球が重要なのであり、名画をこのように大切にするよりも、地球を大切にしろと主張しました。しかし、私には彼らの言う地球は彼らの頭の中だけにある観念としか思えません。地球は大きすぎてなかなか私たちには把握できません。私たちは、まず自分が触れられる自然と共生する感性を養うことから始めるべきだと思います。そして、その感性が成長することによって、地球との共生の感性が養われるのではないかと思っています。

 最後に、自然と共生するためには、具体的にどのようにすべきなのかについて、私が考えていることを述べます。身も蓋もない言い方ですが、それについて詳しい先生方の教えることに耳を傾け、知識を学んで、自分ができる実践をすることです。地球のためにすべき具体的なことを宗教者が教えられるはずもありません。そのような専門的な知識など持っていないのですから。専門家から知識を学んで、自分ができる実践をするのが一番いいのです。

 知識と感性はどちらも大切です。どちらかに偏ってもいい結果にはなりません。私は『十五条の御神訓』に基づいて、自然と地球に対する感性を養う瞑想を試行錯誤してきました。複雑な観想法も考案して実践したりもしましたが、今日お伝えした方法がもっとも簡便で効果があるように思います。
 大神様は自然を愛し、自然と調和し、自然を害するなと仰せです。この自然と共生するための感性を養う瞑想を是非してみてください。そして、具体的なエコ生活の在り方については碩学に謙虚に耳を傾けてください。
 よろしくお願いいたします。